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蕎麦打ち日記1998年11月分

多くの心優しき奇特な方々の犠牲のもとに成りたっている、蕎麦打ち日記であります。


新しい蕎麦屋さん情報もあります。11月分の(2)、旧月のものもお目通しくださいませ。




●1998年11月23日(月)/さらしな粉で柚ソバを打つの巻


蕎麦の実の内側の白い部分のみを挽いた粉をさらしな粉という。外
側黒い皮が入らないから色は白。蕎麦の香りは弱く、つながりにく
いので蕎麦を打つのは難しいとされているが、柚蕎麦など、変わり
蕎麦を作ると蕎麦の香りが薄い分入れた素材の香りがするので、変
わり蕎麦に使われる。ということで、さらしな粉を使って柚蕎麦に
挑戦してみる。これまでも柚蕎麦は打ったが、いずれも挽ぐるみの
蕎麦の香りが強い粉なので、柚の香りはもう一つだった。
さらしな粉も、割り粉(つなぎ)も初めて使う粉なので、どうかと
思ったが、決めが細かく、乾燥が強い。水の量は、1.3 倍くらい必
要なようだ。噂通り、なかなかうまくつながらない。もう少し水を
入れてもいいかと思ったが、まあ最初なので、testに、少な目のま
ままとめてみる。上写真左がそれだが、たまがきちんとつながって
いないのが分かる。これをなんとか切ったのが、真ん中。まとめが
あんな調子なので、太目にしか切れない。太目の柚蕎麦……なんて
お笑い種だが、茹でてみると、透き通ったきれいな蕎麦になった。
つなぎと50:50くらいだったので、柚の香りは十分だが、蕎麦の香
りが薄い。次回は割り粉を少な目にして、七三蕎麦くらいでやって
みよう。


●1998年11月18日(水)/東京神田・「まつや」「かんだやぶそば」で食べるの巻


神田淡路町「まつや」の大もりそばと「かんだやぶそば」のもりそば、酒、焼き海苔。

お茶の水に午後から用事があり、ちょっと早めに出かけて、淡路町
からブラブラ歩いて、昼を「かんだやぶそば」で食べ、用事が終わ
った午後3時半頃に今度は「まつや」へ出かけて、そばを食べた。
一時、神田にある会社の仕事をしていた時期が合って、その頃はよ
く来たが、さすがに用事がなくなるとなかなか来ない。この周辺に
手打ちの蕎麦屋が何軒か出来て、そちらに行くケースが多かったよ
うな気がする。
若い頃には、これが江戸蕎麦……と思っていたが、このところあち
こちでいろいろな蕎麦を食べているので、再度食べてみると、江戸
蕎麦の特徴や良さが分かるかもしれないと思っているのだ。という
よりも、いろいろな蕎麦を食べる内に、江戸蕎麦の味が思い出せな
くなってしまったという方が正解かもしれない。特徴がもう一つ、
思い出せないのである。いや、そもそも江戸蕎麦に、個性を強烈に
主張するような特徴があったのかどうか……ということすら怪しく
なってきているのである。夏に並木薮を食べたが、もう一つ納得が
行かなかったのである。ということで、再度、どこかの江戸蕎麦を
食べたいと思っていたのである。やっとその機会がきた。
まずは、かんだやぶそば。相変わらずの混雑である。混雑と言う形
容がぴったりで、なんとなく慌ただしいのは残念だ。蕎麦は、残念
ながら手打ちではなく機械打ちである。まあ、蕎麦の香りはそこそ
こある。コシもそこそこ。特に強烈な自己主張のないそば、これが
江戸蕎麦の特徴ということかもしれない。悪くはないが、もっと蕎
麦の香りの強い蕎麦、コシのしっかりした蕎麦が欲しくなる。
かんだやぶそばの焼き海苔は、抜群だ。小さな箱に入れられて、下
からあぶられているのだろう。暖かく、海苔の香りがいきている。
「まつや」では、酒を飲まず、大盛り蕎麦だけ食べる。700円という
値段設定には、頭が下がる。かんだやぶも高いわけではないが。こ
この蕎麦は手打ちである。蕎麦がしっかり打ってあるということが
分かる。蕎麦の重さが違うような気がする。香りもまあまあ、コシ
もそこそこ、これまであちこちで食べてきた蕎麦と比較すると、矢
張り自己主張をする個性があまり感じられない。これが江戸蕎麦の
特徴なのだろう。池波正太郎が「こたえられない」と表現している
が、そういうには、もう一つ何かが足りないような気がする。
とはいえ、うまい蕎麦ではある



●1998年11月14日(土)/東京神田・「出雲そば本家」で食べるの巻


神田神保町「出雲そば本店」。お新香と酒、ソバ湯に入った「とろろ蕎麦」と「割り子そば」3枚。

神田に修理の終わったと連絡を貰ったデジカメを取りに、久しぶり
に神田へでかけた。小川町だが、神保町経由で出かけたため、出雲
蕎麦の店があったことを思い出し、出かけてみた。出雲そば本店。
昭和50〜60年代には神田に出かけると決まって寄った店だが、最
近神田に行くことがなくなって、とんと御無沙汰である。神田では、
やぶそばが有名で、あい変わらず混雑らしい様子だが、小生は薮の
蕎麦はあまり食べたいと思わない。蕎麦の香り、こし、どれをとっ
ても「うまい」と唸るほどに感じた記憶は一度もなかった気がする。

「まつや」も、「並木薮」も同様で、悪くはない……という印象しか
ない。かつて「うまい」と思っていた、江戸そばの味が思い出せな
い。コシは余り気にしていなかった。蕎麦の香りは、特に意識しな
かった。これまで、多くの蕎麦を食べて来た。で、もう一度機会を
作ってやぶに行ってみよう。どんな感じだろうか、楽しみである。
さて、出雲そば本店は、かつてはしもたや風のお店だったが、今で
は立派なビルになっている。何年前になるだろうか、借り店舗で営
業していたことがあったのであのときに改築したのだろう。

ここに来るときは、決まって割り子そばを食べた。5枚のセットで
1,000円という値段だった。高めではあったが、まあなんとか許容
できる値段だった。蕎麦そのものは挽ぐるみの蕎麦の香りの強い、
なかなかいい蕎麦で、小生が東京都内でもっとも気に入った蕎麦屋
の一つであった。
久しぶりに行って、メニュは昔とあまり変わらずシンプルだ。割り
子そばととろろそばを注文した。割り子そばは、1枚が400円。5枚
で2,000円という値段になっていた。これを注文するには少し度胸が
必要である。蕎麦を食べるのに度胸が求められたのは、阿佐ヶ谷の
慈久庵以来2度目だ。
結局、友人は割り子3枚を注文し、小生はとろろそばを注文した。
味は、割り子そばは、昔のまま、蕎麦の香りが強く、しっかり打っ
ていてなかなかの蕎麦である。やはり東京では小生の好みの一つと
いって良いだろう。
今回、初めて暖かい蕎麦を食べたが、このユニークさにびっくりし
た。かけそばが、釜揚げ蕎麦になっているのである。とろろそばは、
茹でた蕎麦湯のなかに蕎麦が入り、その上にとろろがかけられてい
る。そして、横にもりつゆが置かれている。つまり、自分でつゆを
入れて味を調整してかけそばにして食べなさい……という訳である。
かねてより、もり蕎麦を食べた後に蕎麦湯を飲むときに、ここに蕎
麦を入れたらおいしいのではないか……と思っていたことがあった。
今日、出雲そばで食べたとろろそばはまさにその蕎麦であった。こ
れを食べていたら、開田高原ひゅって・くらいすで食べた、朝の暖
かいとろろそば、すんきそばの味を思い出した。
これは一度ぜひ試されることをお勧めする。なかなかである。


●1998年11月13日(金)/裾野市「蕎仙坊」で鴨なんばんを食べるの巻


御殿場に出かけたついでに、1年ぶりで裾野市にある「蕎仙坊」(き
ょうざんぼう)に、懸案の鴨なんばんを食べに行く。懸案の……とは、
ちょうど1年前に寄って、小生は鴨あげそば(釜揚げそばを暖かい鴨
汁につけてたべる、同店独自のメニュ)を食べたが、2人の友人のう
ち、A氏は田舎蕎麦の鴨なんばんを食べ、B氏は細い蕎麦の鴨なんば
んを食べた。
ところが、田舎蕎麦の鴨なんばんを食べたA氏が、これは絶対に細い
蕎麦の方がうまい……と言い出した。細い蕎麦を食べたB氏も、この
意見に賛成し、細い蕎麦の方が鴨汁の味がしみておいしい……と言う。
A氏は、「これは来年再度来て、細い蕎麦の鴨なんばんを食べなけれ
ば……という話しになっていたのだ。
今回は、残念ながら肝心のA氏抜きで来たが、もう一度A氏を交えて
来なければ、血の雨が降り兼ねない。
この店は、わざわざ田舎から運んできた田舎家を使った雰囲気がいい。
場所は、人里離れた林の中、しかもウイークデイというのに、混みよ
うは大変なものである。ほぼ、満席。
酒の肴にはお新香がいい。ここのお新香は、量も質もお薦めだ。小生
はこれが気に入った。板わさを食べるが、ここのものは、ワサビ漬け
がすでに挟んであって、小生にはワサビの量が多いようだ。
蕎麦を揚げたお通しもいい。


●1998年11月9日(月)/京都・晦庵(みそかあん)河道屋で京都を味わうの巻


(左から)晦庵河道屋の店先、もり蕎麦、内庭が見える1階の部屋

京都で用事があり、昼を軽めに済ませておいて、午後、京都で、尾
張屋と並んで蕎麦の老舗として知られた蕎麦屋さん、晦庵河道屋に
行った。まあ、驚いた。探したら、見えたのは料亭風の静かな店。
店頭を見る限り、蕎麦屋とは気がつかぬ。知っている人間しか入り
にくい店である。店内の作りは、まさに京都の家。例のうなぎの寝
床の縦長の家で、1階の席は4人掛けのテーブル(小上がり)が4
つに内庭に2席、その奥に4人が入れる小部屋が一つとさらに奥の
内庭に面してちょっと大きめの部屋(3人+5人:写真)があるだけ。
どうぞ、というので、2階を拝見したらに広い畳の部屋12畳ほどの
畳の部屋が3つある、夜は個々が宴会場にもなり、また、入れ込み
で、たくさんのお客さんが蕎麦を味わう。1階は、奥などは2面が
小さな内庭に面していて、まさに京都そのもの。贅沢だ。
入ったときには、誰も客がいないので、酒とニシンを注文し、これ
をやりながら庭を見物。気分がよくて、一合五杓の酒をお代わりし
てしまった。ニシンの味も抜群。ゆっくりと、45分ほど飲んで、蕎
麦は、ざる蕎麦700円と鴨なんば820円(右写真)。ほかに、天ぷら蕎
麦1,280円、山かけ850円、大もろ800円、おろし蕎麦550円、ニシン
蕎麦940円などがある。

蕎麦そのものは、いわゆる蕎麦色のもので、しっかり打ってある蕎
麦だ。江戸蕎麦と非常に近いのはどういう訳か。蕎麦の香りもまあ
まあ。欲を言えばコシがないかなあ、という感じで、蕎麦そのもの
は、悪くはないがぜひお薦めという所までは行かぬ。
しかし、この店は、通りから入った所にあって京都情緒がたっぷり
と味わえ、静かに一時を過ごせるだけに、大変な贅沢をした思いが
ある。蕎麦の味は二の次として、こんな雰囲気で一時を過ごせるの
はうれしい。場所は、三条通りを麩屋町通りに入り、少し上って左
側。料亭風の作りなので間違えそうになるが、蕎麦屋さんである。
麩屋町通りをもう少し行って右に曲がった右側に元々の店が有るが、
そちらは閉めている。京都に行ったら、一度こんな雰囲気を味わう
のもいいのではないか。お薦めの時間は、3;00〜5:00。静かで店内
には誰もいない


●1998年11月5日(木)/大阪・噂の「凡愚」で絶品そばを食べるの巻


大阪で、蕎麦に関して命を賭けている店があるという噂を聞いてい
たので、ぜひ行ってみたいと思っていたが、何しろ月、火、水と週
に3日も休んでしまう店なので、なかなか行く機会がなかった。仕
事で行ってもなかなか行く機会がなかったが、今回久しぶりに、一
人で大阪行きの機会があり、ちょうど帰京する前に時間が出来たの
で、飛んでいって食べてきた。

場所は、大正区の南泉尾、蕎麦店の名は「凡愚」。名前からして尋
常ではない。残念ながらカメラが故障中で、写真は撮れなかったが、
この店は、これまで行った蕎麦店と比較しても、一級にはいる店だ。
入り口はこれが蕎麦屋?というモダンというか、流行の若者向けの
ロックカフェ風で、黙っていれば、蕎麦屋と気付くものはいまい。
店内も同様で、入ったところは待合所。右に石臼と蕎麦打ち台があ
り、店内の壁際には所せましと蕎麦チョコや徳利が並ぶ。見ていて
も飽きない。メニュは、そばだけで、太打ちと細打ちがある。

注文したのは、細打ちそば(もりそば)とかも汁そば。蕎麦は聞い
たところ、木曽福島のちょっと北にある奈川産の蕎麦粉を契約で購
入しているという。今年の蕎麦粉は乾燥していて難しいとのこと。
生産者にそれを伝えたら、例年と同じように乾燥させている……と
いう返事が来たそうだ。そういえば、ひゅって・くらいすで蕎麦を
打ってくれた名人も、今年の蕎麦粉は難しい……と言っていた。
つゆは辛め。カツブシに馴染んでいる者にとっては、余り馴染みの
ない味なので出汁はジャコか。

さて、蕎麦である。まず細打ち蕎麦を食べたが、蕎麦の角がしっか
り立っていて、コシがあり香りもまずまず。夏の一時期を除いては
常に十割蕎麦です……とのことだったが、こんなにしっかり打った
蕎麦は、東京では食べられない。感激である。なぜ、うどんの大阪
で、こんなに本格的な蕎麦が食べられるのに、東京でたべられない
のか……信州蕎麦が正しく残っている大阪と、江戸蕎麦風に蕎麦打
ち技術の向上に走った東京との差かもしれない。あいにくと、酒が
なくて残念だったが、蕎麦の香りを活かした十割蕎麦を求め続ける
御主人に敬意を払いたい。石臼で玄蕎麦を引いている姿を見ても、
真剣勝負を感じさせる気合と丁寧さがある。

鴨汁そばは出色だ。あつもりにつけ汁が暖かな鴨汁。たっぷり入っ
たネギに鴨汁のダシが浸みていい。東京だと深谷ネギで、半生の状
態がうまい……というところだが、関西になるとこのネギが煮込ま
れて味が浸みているのである。蕎麦は、あつもりでも、キチンと角
が立ちよろけていない。いかにしっかり打たれているかということ
である。かけそばになっておらず別に来るというのは、蕎麦の味を
残したいと言うご主人の意図かも知れないが、蕎麦を長めに汁につ
けて食べたけれど、蕎麦の香りは損なわれていない。ただものでは
ない……ということがよくわかる蕎麦である。蕎麦は間違いなく絶
品。ただ、小生には鴨の味の記憶がない。小生にとっては、鴨の肉
はなくても十分な気がした。それほど蕎麦がいいということ「かも」
しれぬ。値段は、もり700円、かも汁そば1,100円。

噂通りの蕎麦だった。蕎麦好きにはぜひ薦めたい蕎麦店である。
営業時間は最近は3:00まで、蕎麦が切れれば終わってしまうので、
注意が必要。TELは06-553-7272


●1998年11月4日(水)/大阪・堂島「喜庵」で食べるの巻


酒とお通し、酒、板わさ、喜庵名物「里おろし」と「かけそば」。器も楽しめる。

大阪のキタ・堂島にあるお店である。これは、本で紹介されていた
お店で、盛り場にあるお店らしく、夜の1:30まで営業しているとい
う、酒のみには嬉しいお店である。
酒の器にしても、なかなかの凝ったものを使っており、ゆっくりと
一杯やりたい……という向きには、「たまらない」店である。
夜中までやっている店なんて……と馬鹿にしてはいけない。どうし
てどうして、蕎麦はしっかり打って有り、コシも強く、蕎麦の香り
もキチンとしていて、申し分はない。蕎麦粉は北海道産や青森産を
使っているという。おカミに聞いてみると蕎麦は二八蕎麦というが、
これだけの蕎麦を打つ職人が大阪にいるとは、予想もしなかった。
しかも、夜中の1:30まで開いているというのは、表彰ものである。
食べたのは、喜庵名物といわれている「里おろし」とかけそば。
「里おろし」というのは、オロシ蕎麦であるが、つゆが大根おろし
と醤油だけという珍しい物だ。小さな器に蕎麦をもり、その上に挽
きたてのたっぷりのカツブシがかかっている。一方、蕎麦チョコに
は大根オロシに醤油を混ぜただけのつゆがあり、つゆにつけても、
蕎麦にかけても……どちらでもいいというものである。一見、辛そ
うに思ったが、食べてみると、甘みもあってなかなかの味である。
これは絶品。一方、かけそばは、非常にシンプルな味で、東京人に
はつゆの出汁が想像できない。場所はキタ新地。大阪駅から歩いて
も、5、6分。一度お試しを。蕎麦好きを裏切ることはない。
値段は、「里おろし」が1,000円、カケそばが700円。量は少なめだが、
場所柄、酒の後にちょうどいい分量。TELは06-341-1882。


●1998年11月2日(月)/相模原「十割そば」店で食べるの巻


左から、岩手県玉山村藪川産の蕎麦粉を使った、3色、南部、鴨南蛮そば。

相模原の出かけたついでに、遅めの昼を食べる段になって、最近、
十割蕎麦を食べさせる店が出来た……とのことなので、早速、探し
て出かけてみた。店は、消防署の近く、パチンコ店の隣で、直ぐに
見つかった。このみせ、岩手県玉山村藪川にあるイーハトーヴ農場
直営の店だそうで、同農場で出来た蕎麦粉を使った十割そばを出し
ている。みせは普通の蕎麦屋で、十割蕎麦を食べさせる……という
気負いは全く感じられない普通の店である。
メニュは、御膳そば、南部そば(田舎蕎麦)……などあり、どれも値
段は安い。十割でこの値段ではとても商売にならんだろうと想像す
るが、お店の人たちは、大丈夫です……とのこと。注文は、2人で
3色そば、南部そば、鴨南蛮……を頼む。さて、蕎麦は、食べたと
ころ、十日町のへぎそばのような感じである。蕎麦粉十割ときいて
いたが、へぎそばのような弾力があり、フノリがつなぎに使われて
いるといわれても、納得するような蕎麦である。これで、十割とす
ると、なんともつなぎの力の強い蕎麦粉かという気がする。
蕎麦粉の香りはあるが、どうにも蕎麦粉よりも、蕎麦の弾力が味の
邪魔をするというか、十割そば特有の、あのザラザラ感がない。喉
に蕎麦があまりにスムーズに入り過ぎるのである。3色蕎麦は、御
前粉、南部、石臼引き粉……の3種類だが、この中では御前粉がお
薦め。まあ、鴨南蛮は別として、1品 600円前後であることを考え
れば味に、文句はない。蕎麦はコシも有り、しっかり打ってある。
仮にへぎ蕎麦風につなぎが使われていても、コストパフォーマンス
から言えば、非常に高いといえよう。


●1998年10月31日-11月1日(1)/塩尻の丸泉で絶品「九一蕎麦」を食べるの巻

デジカメのOLYMPUS820Lの調子が悪い。写真にソフトフォーカスがかかる
ようになっていますがあしからず。修理に出しますので……

古風な田舎家そのままの店構えで、蕎麦は挽ぐるみ、つゆは薄味、蕎麦は一級。

友人から誘われて、蕎麦の産地として名高い開田高原に十割蕎麦を
食べに出かけた。友人の義理の弟が経営するヒュッテ「くらいす」
で、開田村の蕎麦打ちの名手に来てもらって、つなぎなし、蕎麦粉
十割の蕎麦を打ってもらい、ぜいたくに食べようという……という
のである。こんなチャンス行かないわけにはいかぬ。打つのは、土
曜日の夕食……だという。ならば、ついでに行く途中の塩尻で、蕎
麦を味わおうという魂胆で、塩尻で途中下車。最近は、横浜から松
本まで、直通の「はまかいじ」なる特急が出ているので、これで出
かけると塩尻着が11:19とちょうどいい時間。
ここに寄ったのは、頑固な店と聴いていた「丸泉」へ行くためであ
る。駅からちょっとあるとのことなので、タクシーにのる。片道が
1,270円。田んぼの中の一軒家。なかなかのいい雰囲気だ。メニュは、
もり1,000円、大もり1,300円、十割そばが2,500円。他に暖かい蕎麦
もあったが失念した。

もり蕎麦は九一蕎麦。蕎麦は好きずきがあるが、挽ぐるみの蕎麦粉
で、蕎麦の色は黒っぽい。小生好みの蕎麦である。大盛りを注文。
注文を取りにくる時に、茄子の味噌漬けをお通しに持ってくる。こ
れで、お茶を呑みながら蕎麦がくるのを待つ趣向。分かっていれば
酒を注文するのだったと思ったが、ここで注文しても、蕎麦がすぐ
に出てきてしまうのでは、と思い涙を飲んで断念。少したってから
蕎麦がでてきた。あそこで酒を注文してもよかったかもしれぬと後
悔。香の物がついてきたということは、しばらく時間がかかります
よ……ということだから、酒を頼めばよかった。さて、蕎麦と一緒
に蕎麦つゆを持ってくるが、その時に「こちら焼き味噌です。つゆ
に入れるか、蕎麦につけてお召しあがり下さい」という。焼き味噌
と聞いてまた、酒が欲しくなったが、この焼き味噌は肴ではなくて、
つゆの味付け用であることが後で判明。出てきた蕎麦は右写真のよ
うなそば。本来の信州そばであろう。
さて、つゆを蕎麦チョコに入れて食べてみると味が薄い。つゆだけ
をなめて見たら、かけつゆほどの濃さ。ここで、焼き味噌……云々
の意味が判明した。まあ、でも、薄味なら蕎麦の香りが楽しめるだ
ろうと半分食べたところで、味噌を入れてみる。

蕎麦をつけてすすると、これがなんとも不思議な味で、味噌味のつ
ゆで、九一蕎麦を食べるという初体験をすることになった。これが、
なかなかなんだよね。なんせ、蕎麦そのものがしっかりと蕎麦の香
り、コシを主張している。この蕎麦を食べると、昨今、はやりの洗
練された蕎麦というものが、なんとも薄っぺらなものに思えてくる。

蕎麦としては文句無しに1級を付けたい。

このところ、一茶庵の道場で習ったり、翁で修行した……という、
蕎麦打ち技術を身につけて独立する蕎麦職人さんが増えた。そのた
めに、洗練された蕎麦とでもいうか、蕎麦の持つ荒々しさとか、野
生的な自然の素朴さ、野趣といった、本来の蕎麦の持つ良さを失っ
たような蕎麦がハバを利かせている。そんな中で、この丸泉さんの
そばは、蕎麦の良さをみごとに生かしている。感激。これが蕎麦と
いう気がする。十割蕎麦を食べさせてくれる「新次そば」の系統に
つながる蕎麦で、「これぞ蕎麦」という思いがした。
聞いてみると「どこに習ったわけではない」という。自己流を抜く
ご主人にエールを送りたい。帰りのタクシーを呼んで、締めて交通
費が2,720円。大盛り蕎麦が1,300円。1杯の蕎麦が4,020円というこ
とになるが、それでも味わう価値はある。一度ゆっくり酒を味わっ
て、蕎麦を楽しんでみたい。
それに比べて……おなじ塩尻で、どうにもならない体験もした。

でまあ、丸泉さんに出会ってほっとしたのであるが、実は塩尻に着
いて、最初に駅近くの「遺跡そば」という店に入った。雑誌で紹介さ
れていたこともあり、駅から直行したのだが、外に面してあるガラ
ス張りの蕎麦打ち台のガラスに落語家の円楽や永六輔らのハガキが
ベタベタ貼られている。店の外にこういう有名人のハガキなどを貼
っている店で、味が良かったためしがない。
一瞬迷ったが、まあせっかく来たことだし……と中に入る。注文を
見てびっくり、もり1,450円、ざる1,550円。帰るわけにも行かず、
仕方なしにもりを頼むと、松茸汁とワイン一口分を持参し「どうぞ、
サービスです」。「いったい、何を考えとるんじゃあ!」と思ったが
小生は大人なので、黙って松茸汁に少し手をつけ、蕎麦を食って出て
きた。レジで帰りがけに、「どうぞ」とティッシュをくれた。蕎麦の
味をここで言及する気は毛頭ない。コストパフォーマンスは最悪。
ぜひ皆さんには「決して近づかぬように!」とご忠告申し上げたい。




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