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蕎麦打ち日記ボタン 2003年4月分

多くの心優しき奇特な方々の犠牲のもとに成りたっている
「蕎麦打ち&蕎麦食べ歩き日記」であります。


1998年4月以来、ここに登場する全蕎麦屋さんの索引は、こちらです。
日記に掲載してあるお店が、県別にひけます。

店名の前に「*」印のあるものは、蕎麦好き読者からの投稿情報です


●2003年4月30日

おくむら(渋谷)

東京都渋谷区神山町5-7(NHK正門前)
tel:03-3466-4600
営業時間:11:30-15:00、17:30-20:00(土曜日は昼のみ) 休み:日曜・祭日




お通しのからすみ+板わさ、せいろ、せいろup
   
  26日は振られたが、この日は何とか時間を作って「おくむら」さんに行った。また、熱心な……と思われるかもしれないが、映画を見に行ったついでに寄ったに過ぎない。ま、ついでと言うよりもどちらの同じ比重だが。公園通りをまっすぐ行き、井の頭通りに出て左に行くと、ちょうどNHKの正門前にあるのがこのお店。お客さんとしてもNHKの関連の人が多いようだ。店内は、右側にテーブル席が3つ、左にコア狩りがあってそこにテーブルが3つ。小上がりの先が打ち場になっていて、その奥が調理場になっている。席数は全部で4人×6=24名という計算になる。
  ビールと思ったが、最近はビールをもらうとそれで腹がくちくなってしまう。神亀があったので、神亀のぬる燗と板わさをいただくと、神亀とお通しのからすみが出されてくる。これがお通しで着くなら、板わさにするのではなかった……と後悔するが、事前に知らぬのでは致し方ない。とはいえ、かまぼこもそれなりの質の高さで、からすみとかまぼこを少しずつ口に運んで、神亀ぬる燗と出羽桜のひやをゆっくりいただいた。ま、シアワセなひと時である。
  さて、最後にいただいたのはせいろ。ここは鴨南蛮が人気のようで、私がいた間に入ってきたお客さんの半分は鴨南蛮を食べていた。次回はこれをいただくことにしよう。せいろは、きりっと冷えていて、写真では角がないように見えるがどうして角もたった、しっかり打たれた蕎麦である。弱冠、茹でが浅いかな……という気がするが、それだけ蕎麦の固さもあり、コシもまずます。香りがあるのが嬉しい。蕎麦としては悪くない蕎麦である。ただ、私としては、あまり冷やされたそばは好きではないので、5月ならば常温の水を使って欲しかった気がする。たぶん樺の香りもそれで減じられているのだろう、におい立つ蕎麦……という状態ではなかった。しかし、このあたりは好き好きだろうから、あくまでも私的な希望である。私の分だけせいろをゆでる……という状態だったから、事前に分かっていれば、「あまり冷やさないで」とおねがいすることもできた。ま、受けてくれるかどうかは別ですが……。
  ラーメン屋さんでは、客の希望にあわせて麺の茹で具合を変えるということをしている店が増えているが、このあたりは蕎麦店も見習う余地があるかもしれない。近くにある立ち食い蕎麦屋「ゆで太郎」でも、何も言わなければ、茹で置きの蕎麦を出すが、混雑時以外は、「茹でたての蕎麦を下さい」といってくれればゆでます……と店内の表示している。蕎麦の味を大事にする手打ちのお店ならば、茹でたて以外にも、お客さんにサービスできることはあるような気がする。ま、そんなことされたら迷惑……よけい、蕎麦が難しい食べ物になって、いきにくくなる……とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんね。
   


●2003年4月29日

常陸秋蕎麦の粗碾き

全粒粉




石臼で碾いた粗碾き蕎麦。黒い点が見える。ちょっと太めの蕎麦
   
  常陸秋蕎麦の抜きをいただいたので、昼飯にいただこうと、それを石臼で碾いてみた。石臼は、粉の細かさを替えられるように、鍛冶屋の友人に頼んで厚さ1mm弱のワッシャーを何枚か作ってもらった。何枚か重ねることで粉の細かさを調節できるというわけで、とりあえず3枚ほど入れてみた。少しぐらぐらするが、なんとか碾ける。400gほどを、碾いたが、20メッシュが通らない粉もある。もったいないので、そのまま全粒粉で打ってみた。この粗さはどのくらいだろうか。完全な丸抜きになっていなかったので、それが碾かれて黒い粒が入っている。ちょうど、胡桃亭さんのそば粉のようだ。
  加水率は60%。ドウをペタンペタン叩いてつぶすと、中に含まれていた水分が表面に浮き出してきて、しっとりしてくる。粗碾きの生粉打ちは動しても表面がボソボソになりがちなので、こうして叩くと言う方法は有効な気がする。極粗の全粒粉なので、伸す段階であまり薄くすると切れてしまいそうなので少し厚めにする。畳んで切って、ゆでたのが上の写真。ちょっと太めだが、香りが充満して、特有の食感もあり、申し分ない。粗碾き粉の打ち方にもなんとかなれた。伸しまでの段階だけでなく、切った後の扱いにも、湯でにも神経を使うので、なかなかなれないが、それだけにていねいに打ちように成り、悪くない。最近、なれと共に結構いい加減に打つこともあるので、少し神経を使うのもたまにはいい。なにより、この香りのよさが嬉しい。
  残念なのはかけそばがもう一つなことだ。この日、実は蕎麦汁を作った。たくさんだしをとったので、もったいないので2番だしをとることにしたが、打ったのが粗碾き蕎麦では、かけそばを食べるという楽しみがない。
 


●2003年4月28日

笛家

東京都品川区旗の台3-13-32-4-22 03-3782-6672
営業時間  無休……ソバ屋さんリスト参照




ネギと三葉が美味しいたぬき蕎麦
   
  口直しによったのが笛家さん。で、たぬき蕎麦をいただいた。鴨汁そばでネギがなかったのに拍子抜けで、ネギが食べたくなり、ここのネギが美味しいのを思い出したのだ。ネギをタテに4つに切ったネギが入ってくるのだが、このネギがぱりぱりと新鮮で美味しいのだ。私はこのネギと三葉だけでも価値があると思っている。そばは、多加水気味に打たれていて、知るものだとすぐに柔らかくなってしまうのだが、香りがあるので我慢できるのだ。せいろが600円で、たぬきが670円。価格パフォーマンスは抜群である。
 


●2003年4月14日

HONMAMONじいんず

東京都品川区旗の台2-4-22 03-5702-6667
営業時間 11:30-14:00、17:00-12:00 無休




こういう鴨汁そばは始めて
   
  旗の台に出かけたらちょうど昼になった。百々亭という美味しい蕎麦屋さんがあるのでそこに行こうと向った。途中でひょいと見ると新しいお店が出来ている。何のお店か分からないが、昼のメニュが出ているので見ると、蕎麦がある。それも、せいろ、とろろ蕎麦、鴨せいろ……と並んでいて、なにやら蕎麦を売りにしているようなのだ。店の名前を見ようと探したが、かかれているのだが、よく分からない。……こういうお店多いですね。読みやすくなければ意味がないと思うのですが,どうしてこういう読みにくいお店があるのでしょうかねえ。そういえば、東名横浜出口から、横浜の方面に走っているとよく見る、ラブホテルがあるのだが、通るたびに、一緒に乗っている人間に、「ねえ、あれなんて読むんだろ?」と聞くのだが、だれもはっきりとは答えてくれぬ。「あらん○ー」じゃないの?と言いながら自信なさげである。確実に損をしているね。……と余計な方向に飛んだが、このお店もそうだ。帰りにもらってきたコピー印刷物で、やっと名前が上のようなものであることが判明。分かっていたら、入らなかったか。
  ちょっと迷ったが、うまくなくてももともと……という気になれば怖いものはない。入って、鴨汁そばをオーダーした。900円と言うから、格安だが、メニュを見た段階でほとんど覚悟を決めた。出てきた蕎麦は上の写真のように蕎麦用のつゆというよりも、カケ汁に近く、だしももう一つ。味は薄めで、塩味か? 三葉が入れられている。蕎麦は、蕎麦粉40%くらいか、香りは感じないが、コシはまあまあある。こういう蕎麦のfanもいるかもしれない。単純なせいろをいただけばよかったが、朝飯を抜いていたので欠食児童のように飢えて辛抱できなかったのが敗因である。で、どうしても美味しい蕎麦が食べたくなったので、笛家さんに行って、
 


●2003年4月26日

「おくむら」さんに振られる

井の頭通り、渋谷NHK前




閉まっていた

  連休前の土曜日、26日渋谷でやっている映画を見に行こうと出かけたので、ついでに蕎麦を食べようと……NHK前にある「おくむら」さんを目指して行った。このお店、土曜日は20:30までやっているはずで、映画の最終回が20:30からだからちょうどいいと、 7:30頃にいったら、なんと閉まっている。土曜日は確か20:30までやっているのではなかったか? 残念なので、他にどこか……とあわてて探したが、渋谷は蕎麦の不毛遅滞。ヘギ蕎麦くらいしかない。デパート上にあるそば店に行く気はしないので、諦めて映画館(東急文化村ル・ソネマ)のすぐ前にある店に入った。ラーメン390円なのだ。冷やし中華と生ビールをいただいたが、なんと、冷やし中華490円+生ビール(500ml)350円で、840円+消費税42円で882円。なんと安いことか。この490円の冷やし中華が結構いけるのだ。これよりひどい冷やし中華を食べさせる店はゴマンとある。何か得した気分になって早めに映画館に行ったら、満員で入れない……といわれた。ツイテないようなツイテいるような一日でした。終わり悪ければすべて悪い?
 


●2003年4月14日

石碾屋さんの粗碾き蕎麦粉






一番右は拡大したもの。粗碾きが良く分かる

  蕎麦打ち場の棚が出来てきれいに整理されたら、蕎麦が食べたくなってきた。このところ、これは!と思うようなそばを食べていなかったので、4日、9日に食べた程度ではこの渇きはいやされない。ちょうど打ち場も整理されたので、では……と打ってみる事にした。打ち台の向こう側40センチの幅で棚が覆い被さっているが、蕎麦を打つのには全く支障はない。片づけが不要なので快適である。冷凍庫を除いたら、1か月前にいただいた石碾屋さんの20メッシュという粗碾きそば粉が少し余っていたので、秤かってみると300gある。ちょうどいいので、これを打ってみた。1ヶ月たってどんな風に変わっているか……と思ったが、打ちやすさも全く変化はない。
  写真のように、ドウも、茹であげた蕎麦もほとんど区別がつかないくらいだ。並べて一緒に食べてみると、違いが出るかもしれないが、これだけを食べたところでは、お薦めしたい粗碾き蕎麦である。粗碾き特有の食感もあり、蕎麦の香りが口の中で広がる。コシもあって、やはりこの蕎麦は美味しい。1ヵ月半近くたってもこのクオリティを保っているのは見事である。今回は、粉全部を蕎麦に打ってしまったので、打ち粉は普通の打ち粉を使用したが、極力使わずにすませた。加水率は59%。使ったのはハウスの六甲のおいしい水硬度84である。もちろん、ドウの伸しはたたきである。おかげでみずみずしい肌の麺体になった。たたきは、粗碾きには特に有効な手法のようである。
 


●2003年4月14日

蕎麦打ち台の「棚」






●蕎麦打ち台と「棚」、洗い場(反対側)の状態

  風呂場の桶の縁に30cmほどの下駄を履かせて、厚さ5cmほどの板を載せて蕎麦打ち台としているが、蕎麦打ちの道具がやたらと増えて、打ち台の上が荷物置き場になってしまっていた。蕎麦を打つには、この道具を片付けなければならない。少しの蕎麦を打つときには、面倒なので別にある90×90のシナベニアの打ち台をテーブルの上に出してそこで打つなんて事になってしまっていた。片付けるより、そのほうが楽だからだ。いったいこれはなんだあ?と思っていたので、打ち台の上に置く棚があるといいな……と、知人の木工趣味のカメラマンT君に話すと、いいですよ……と気軽に引き受けてくれた。もともと、打ち台も、打ち台の脚も、石臼の取っ手も、蕎麦猪口用の棚も、彼の作である。いまや、私の蕎麦打ちにはなくてはならない、頼りになる道具作りの相棒である。さて、棚を置いたところが、上野写真である。なかなかいい。打ち台の奥1/3にあるので、打つのには全く支障がない。これで打ちやすくなった。さっそく蕎麦を打ってみよう。どうしてこんなに道具が増えるのか?
  とまあ、書いたら、友人から電話がかかってきて、道具なんぞ洗い場に置けるだろうといってきた。仕事中というのに、ヒマな人間がいるものである……と思っていたら、リタイヤしてしまったとの事だった。そうか、サンデー毎日になったのか、だから、いつでも蕎麦は付き合うぞ! つまり、ヒマだから遊びに付き合え! ということなのだ。この忙しくて蕎麦を食べにもいけないというのに、なんてこった。実は洗い場も荷物が一杯なのだ。90×90の板厚24ミリの打ち台が4枚と、90×120ミリの打ち台が1枚、それに麺棒と自転車が置かれているのである。  


●2003年4月9日

「喜庵(きあん)」
神奈川県津久井郡藤野町名倉1003
TEL 0426-87-2755 定休日:月曜日+第3火曜日
営業時間 平日:11:00−16:00、17:30−20:00





●(上段)お店、メニュ、漬物、(下段)ニシン、天ぷら、石臼挽きせいろ、ダッタン蕎麦の辛み蕎麦

  桜を見にブラブラ出かけた際に、蕎麦を食べようということになって探したのが、この藤野のお蕎麦屋さん。藤野町は神奈川県の北西端に位置する。西隣は山梨県上野原町、北は東京都西多摩郡檜原村である。20号線甲州街道を下って、相模湖駅、日蓮大橋への道を過ぎて、藤野駅を過ぎて、すぐに左に降りる道を入って橋を渡り上がったところを左に曲がり、しばらく進むと右に藤野スポーツランドの入り口のアーチが見える。このアーチを入ってすぐに左にあるのが、このお店。ロケーションから言うと、とてつもない悪条件である。この日も、店内のお客さんは、我々のほかには、10組、約20人ほどか。ご主人は、中軽井沢の「かぎもと屋」さんで、3年半修行をして、ここに開店した。そういえばかぎもと屋さんも半年間の繁閑の差は大きい。ここも、「温かくなってやっとこれからお客さんが来てくれます」とおっしゃる。確かに寒いうちは、ここまで出かけてくるのもなかなか大変だ。お客さんは、このお店を目当てにしてくるのだろう。常連客のようだった。
  さて、例によってまずビールに漬物、ニシン、天ぷらを注文する。酒のつまみとしては、この3品だけである。あとは御願いすれば抜きを作ってくれるだろうが、それは聞かなかった。漬物、ニシン、天ぷらのいずれも、盛りが大きく、ニシンは2枚がくる。ニシンがきてから、天ぷらは多すぎたと反省したが、このサービスのよさは売りの一つだろう。ビールの後に牧水生酒をいただいたが、あまり癖がない酒らしい酒で、漬物に良くあった。漬物は、大根、キューリ、ナスの3種類だったがいずれも、ちょうどいい漬き具合で嬉しくなってくる。この量ならば、漬物だけでビールに酒2、3杯がやれそうである。
  蕎麦は、石臼挽きせいろと相棒がダッタンそばの辛み大根蕎麦をいただく。石臼碾きはなかなかきれいな蕎麦だったが、惜しいかな少し蕎麦の香りが弱い。ダッタン蕎麦はあのダッタン蕎麦特有の苦味もなく、色もそれほど黄色くない。この程度ならばダッタン蕎麦も十分に食べられる。これからの季節、ちょっと遠いが、のんびりと遠出して蕎麦でも食べたい……という向きには悪くない。近くに藤野の園芸ランドもあり、植物好き、家庭ガーデニング趣味の人には最適である。ここに行くまでの相模湖、相模川も舟遊びなどできるので、家族連れなどにも最適かもしれない。
 


●2003年4月4日

手打ちそば・割烹「ひろと家」
北区上中里3-18-1
TEL 03-39276617 定休日:月曜日
営業時間 11:30−14:30、17:30−22:00




●店構え、てんぷら、4色そば、かけそばのどんぶり

  和邑の裏にある、都電荒川線の鬼子母神駅までいき、そこから都電で、2軒目に向かう。Mさんの案内だが、本人も場所は良くわからない。何でも、都電の梶原駅近くの明治通り沿いにある店だという。「店名は?」「わからん。」とこれである。なんでも、車で移動中に見つけて入ったことがあるとのことだが、正確な所在地は車でこないとわからないという。都電荒川線……は実に何年ぶりのことだろうか。とりあえず、梶原で降りようということになり、梶原で下車して明治通りを三ノ輪の方向に向かって進む。2、3分歩いたろうか、通りの向かい、進行方向左に「手打ち蕎麦」ののぼりが見える。何のところはない、このお店が目的の蕎麦屋さんだった。あっけない発見。
 
  店内は、手前がテーブル、その左にテーブル2つの畳の小上がりがあって、奥のカウンターに数席……で、20名弱のお店である。メニュは豊富で、蕎麦はせいろのほかに変わりそばも各種あり、肴も刺身から焼き物、煮物、揚げ物と豊富だ。店名の「ひろと家」さんは、ご主人のひろしさんと奥さんのとしこさんから付けられたもの。焼き味噌があり、もしやと思ったが、店内に雑誌「DIAS」に掲載された、都内一茶庵系蕎麦店一覧のページが掲示されていたので、一茶庵系だとわかる。一茶庵系の「蕎上人」(元駒形一茶庵)の教室で蕎麦打ちを学んだという。一茶庵系の蕎麦屋さんにしては珍しく、メニュも肴も豊富で、町の蕎麦屋さん風。いわゆる一茶庵とは趣を異にしているので、一茶庵系と思ってくる人は面食らうことだろう。こうした豊富なメニュの町の蕎麦屋さん……で、蕎麦が手打ちというのは、繁盛店の一つのパターンである。
  まずはビールに、天ぷら、ワサビ菜、菜の花……で、その後、出羽桜などをやる。酒も久保田千寿、万寿なども5、600円という価格で、肴の豊富さとあいまっておすすめである。で、最後の上がりに私がいただいたのは、3色そば。奥さんに蕎麦打ちのことなどいろいろと聞いていたり、Mさんとレモン切り蕎麦の打ち方など話していたためか、3色蕎麦(1,400円)を注文したが、出されたのを見たら4色蕎麦であった。気を利かせてサービスをしていただいたようだった。Mさんは鴨南蛮をおいしいおいしいといいながら食べていた。先に和邑で3色そばを食べていたので、温かいそばも魅力だったが、やはり始めての蕎麦屋さんでは何はともあれ”せいろ”をいただかないと……という、悲しい性のようなものに押されて3色蕎麦をいただいたのだが、やはり意志薄弱さはいかんともしがたい。4色の後にカケ蕎麦を御願いしてしまった。
  このパターンはどこかであったぞ……と思っていたら、そうだった、思い出した。Mさんと5年前、栃木に蕎麦と温泉の旅に出かけた際、一茶庵の後で”らん丸”という蕎麦屋さんに入った。ここは鴨が自慢でフランス輸入の合鴨を使用していると、入口に合った口上書きに記されていたのだが、当時は、”蕎麦はせいろ”と思い込んでいたので、私はせいろをいただいたが、Mさんはさっそく鴨南蛮をオーダーし、出された鴨南蛮を美味しそうに、”うまい、うまい”と食べていたのだ。私から見ても、鴨の油が温かい蕎麦の汁に溶け出して、それはそれは食欲をそそる光景だった。それまで、”蕎麦はせいろ”と思っていた私が、鴨南蛮を始めとする種物を食べるようになったのは、それ以来である。
  4色蕎麦は、せいろ、いなか、レモン切り、さらしなである。レモン切りはさわやかな味でいい。せいろも香りがあり、食べているうちに、Mサンに刺激されて、温かい蕎麦が食べたくなったので、カケを注文する。一つは、どんぶりがかわいらしいのである。なんとも明るい、かわいらしい器ではないか。カケそばも、蕎麦の香りに、鰹節の味が利いた汁で、これもおすすめである。何度も言うが、私は食べていないが、鴨南蛮そばは美味しそうだった。


●2003年4月4日

そば処「和邑(わむら)」
豊島区雑司が谷3-12-3
TEL 03-3987-5136 定休日:火曜日
営業時間 <平日:11:00−15:00、17:00−21:00><土・日・祭:11:30−21:00>





●(上段)桜切りの仕込中、(下段)店構え、メニュ、3色そば

  そば仲間のMさんから、久しぶりでそばを食いに行こう……というお誘いを受けて、私には不案内な東京の北方面にある蕎麦屋さんに案内していただいた。一軒は、雑司が谷・鬼子母神近くの「和邑」(わむら)である。明治通りから鬼子母神への道に入り、しばらく進んでちょっと左に入った右…にあるのでなかなか探しにくいかもしれない。鬼子母神をはさんだ裏が、都電荒川線の鬼子母神駅である。外観は、写真のように、ちょっとした小料理屋さんである。よく手入れされた白木の引き戸の玄関前にきれいな花が飾られていて、打ち水がされている……そんな雰囲気で、蕎麦屋さんとしては、”高いのでは?”とちょっと二の足を踏みそうな雰囲気がある。お店に入れば、蕎麦打ち職人であるご主人も奥さんも丁寧な受け答えで、そんなイメージは変わる。店構えは初のお客に対して結構重要な意味を持っているなあ……と感じたしだい。店内は、4人カケのテーブルと小上がりの座敷で、全部で20〜25名というところか。小さいながら、きちっとまとまった雰囲気がある。
  さて、では何を……とメニュ見ると、せいろ、いなかのほかに、桜きり、ゆずきり、更級……など変わりそばがいろいろとある。もしかして……と、伺うと伊豆の一茶庵で習いました……とのこと。片倉英晴さんがやっていた蕎麦打ち教室の出身である。小さめのお店でこれだけの変わりそばを用意するというのは、リスクもあってなかなか大変ではないか。出かけたのは、夕方早めで6時半ころである。そのためか、ご主人が蕎麦を打っているのを拝見することができた。桜切りのようだった。これは、予約のお客さん用の蕎麦……だということだったが、こうした蕎麦屋さんは、どちらかといえば出足は遅いだろう。それでも、夕方に蕎麦を改めて打つというのは、残るかもしれない……というリスクを考えたら、大変なサービスということができよう。
 
  お蕎麦屋さんに入ったら酒、板わさ、焼き味噌で一杯やって……というのがいつものパターンだが、今回は、もう一軒寄りたい……という思いがあって、ここは蕎麦だけにしようと、最初からMさんと打ち合わせ済みなので、蕎麦だけを注文する。いただいたのは、せいろ、いなか、桜切りの三色蕎麦(1、500円)である。どれも、香りもあり、秀逸な蕎麦である。せいろは腰があり、田舎は香りがある。悪くない。特に桜切りは、ほんのり酸味が感じられて、これは私が今までいただいた桜切りのなかでは、好みのほうだ。桜切りは、塩漬けにした桜の葉を塩抜きして刻み、それを更科粉に打ち込む。いわば桜の葉の塩漬けなので、戻し具合によっては塩加減、酸味が残る。その残し具合がお店によって異なるようで、戻しが浅いと酸味も感じられるようだ。好みで酸味はあまりない方がいいという人もいて、これは好き好きがある。私はどちらかというと、梅貝割れ蕎麦……などを自分では作ったりするので、梅味、酸味は嫌いではない。ここの桜切り蕎麦は、この梅の酸味に近い風味が感じられたのである。
  「こうした雰囲気のお店は、一杯飲んだあとに蕎麦を食べにこられるといいのですが、営業が21:00では、酒を飲んだあとには間に合わないですね」というと、おかみさんは、「そうですね、飲んだ後にこられるお客さんもあります」とのこと。せいろが1,000円と、蕎麦としては比較的高めだが、味は私好み。酒、肴はチェックしなかったが、次回の楽しみにしよう。
 

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