2003年3月分
多くの心優しき奇特な方々の犠牲のもとに成りたっている
「蕎麦打ち&蕎麦食べ歩き日記」であります。
1998年4月以来、ここに登場する全蕎麦屋さんの索引は、
こちら
です。
日記に掲載してあるお店が、県別にひけます。
店名の前に「*」印のあるものは、蕎麦好き読者からの投稿情報です
●2003年3月6日
秋田県本荘市「石碾屋」の粗碾き蕎麦
●(上段)3番目:粉。細かい粉も結構ある。4番目:加水50%、まだ入る。
(下段)2番目:叩いて延ばしたら、しっとりしてきた。不思議な蕎麦打ち技法”丸秘”テクだ。
幸運というのはひょんな事から舞い込むもので、私の場合は、幸運を呼び込もうと思って幸運が来ためしがない。たいていは、知らん振りをしているときに、ひょこっと幸運に見舞われたりする。ま、幸運といってもたいしたことではなく、まちがてもジャンボ宝くじの1等が当るなどということはない。ま、宝くじならばせいぜい3000円というところだ。……そんなものは幸運とは言わない!という声もありそうだが、その程度をもって幸運と喜ばないと、幸運というものに見放された……という惨めな人生に涙が出かねないので、ここはご勘弁いただこう。宝くじの一等には及ばないが、それに継ぐくらいの幸運が舞い込むこともあるのだ。それもひょんな事から……。
前置きが長い!と叱られそうだが、この日記のタイトルを見ればもうお分かりのように、非売品、自家用のみ製粉……という秋田は本荘市の石碾屋さんの粗碾きそば粉をいただけることになったのである。石碾屋さんとは、江幡さん経営のお店だが、そもそもこの方、蕎麦好きの猛者が集まるsoba-mlで石臼碾きの先鞭をつけ、ブームを巻き起こし、石臼病患者を世に蔓延させた張本人である。ここ、1、2年の石臼碾き患者の大半は、この人のウイルスに感染したものだ。その過激さ、後戻りを知らない突撃精神は、深い洞察を備えているだけに、赤子や迷える子羊たちにとっては、教祖の如く映る。いとも簡単に感染してしまうのである。
さて、そのそば粉である。袋の上から見ても、粗碾きらしい特徴の粒粒が見える。黒い点が少ないのは、丸抜きからの粗碾きであるためだ。丸抜きを一回碾いてそのまま、20メッシュの篩を通った粉……とのこと。袋から出して手に触ってみると、粗碾き特有の砂のようなざらついた感触があるが、意外とやさしい。これは、粒度の分布が粗いものから細かいものまで広いためのようだ。細かい粒も意外と多い。とりあえず一人しかいないので、以下のように200gを打ってみた。
・20メッシュ粗碾き粉、生粉打ち ・加水、クリスタル・ガイザー(硬度38)アメリカ産 ・加水量:約58% ・打ち粉:共粉を使用 水は、45%(90g)、5%(10g)、5%、5%、5%と65%まで用意しておいて、まずは45%を入れる。粗碾き粉ということになれば50%以下はないだろうとの予想のものである。45%を入れても、粉は”あれ?水が入ってきたの?”という済ました顔をしている。この程度ではびくともしない。水回しを行なう手に粉はやさしく、粗碾き粉としては非常に打ちやすい粉だ。面倒なので、5%+5%を一気に入れる。これで、55%である。たぶんもう少し入りそうだとの読みだが、案の定まだまだ水が欲しいといってくる。そこで、今度は3つめの5%のカップから少しずつ入れて、半分以上を入れたあたりで、止める。ここで、58%あたりだが、このあたりがちょうどいいところではないか、気持ちもう少し入るかな……という気もしたが、結果からみると、58−59%あたりで良いようだ。
58%で、まとめたのが、上の写真で、ドウの肌に凹凸があるのが分かる。これが粗碾き粉でドウをつくる時の特徴である。さて、これを延ばすのであるが、今回は、江幡さんに敬意を払って、新開発のペタンペタン殴打法のノシを導入してみた。それが、下段の左から2つめである。上段の右端と下段の左端がドウである。表面に凹凸があるのだが、押して丸くしてゆく工程で、叩いてみたが、これが表面がつややかになってきて、しかも内面がしっとりしてくる感じがあり、非常にいい感じなのである。この方法は粗碾き粉の打ち方としては、目からウロコのテクニックかもしれない。……で、延ばして切ったのが次の写真。200gなので何重にも折りたたむだけの幅がない。包丁が30センチほどなので、長さを28cm×50cmほどに延ばし、2重に重ねて切りに入る。打ち粉は共粉を使用したが、ここまでほとんど使わない。麺棒に巻きつけて延ばす……という作業をせずに、そのまま延ばしてゆくので、打ち粉はなくてもなんとかなるのである。ただ、麺棒が湿ってきてくっつきやすくなるので、注意が必要だ。で、長いほうを2重に折りたたむために、ここは打ち粉を振ったが、それもきわめてわずか。すぐに食べるからそれほど打ち粉を振らなくてもくっつかないだろうという読みである。2重に折って、切ったのが上の下段中央の写真だ。切りベらで言えば、標準より気持ち太め。22-23というところであろう。
茹で時間は約45秒。200gといえば結構な量である。半分をせいろでいただき、残りもせいろと思ったが、どうせならとカケでいただいた。結論は、せいろは香りもよく、のど越しの粗碾き粉特有のざらざら感も心地よく、”馥郁たる”という表現そのままの蕎麦であった。その香りも、なんとなく石のような硬さと柔らかさが同居しているような不思議な香りがあることに気が付いた。これは粗碾き粉と細かい粉の香り方の違いかもしれない。細かい粉から出る香りはやさしく、粗碾きの大粒の粉から出る香りが固めに感じる……そんなことかもしれない。不思議な感じであった。これまで打った胡桃亭さんや秋田・鹿角の切田屋さんの粗碾き粉は、粒度が比較的一定しているために、蕎麦の香りも均一だが、この石碾屋さんの粉が独特の粒度分布をしているための特有な香り方なのかもしれない。
せいろに比べてカケそばは、香りもせいろにかなわない。どうしてだろうか。せいろよりもカケのほうが普通は香りが強く感じられる。しかしこの粗碾き粉だけは逆である。かけそばは、お薦めしません。それにしても、石碾屋さんの粗碾き粉、粗碾き粉の中では、打ちやすさと独特の豊かな香りは特筆に価する。市販して欲しいところだが、当分は自家消費用の製粉でしっかりお店を運営していただく方がよろしいでしょう。ありがとうございました。
肝心の蕎麦の写真が、アップにしたかったのであまり近くで取りすぎてしまい、ボケになってしまった。ごめんなさい。入れ込みすぎでした。
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