2003年2月分
多くの心優しき奇特な方々の犠牲のもとに成りたっている
「蕎麦打ち&蕎麦食べ歩き日記」であります。
1998年4月以来、ここに登場する全蕎麦屋さんの索引は、
こちら
です。
日記に掲載してあるお店が、県別にひけます。
店名の前に「*」印のあるものは、蕎麦好き読者からの投稿情報です
●2003年2月27日
讃岐うどん「めりけんや」(JR恵比寿駅構内(東口))
東京都渋谷区恵比寿南1-5-5 03-3716-4198
営業時間 平日7:00−22:00 、土・日・祝7:00−21:00
●ちくわ天うどんと前景
ちょうど恵比寿で乗り換える用事があったので、うわさの駅構内にある讃岐うどんセルフ店「めりけんや」に行ってみた。このお店は、JR四国が地元で展開する讃岐うどんのお店を東京に出店したもので、恵比寿駅構内と立地もいいために、連日かなりの人気のようだ。駅構内といっても、地下鉄などの乗り換えのメイン改札口がある西口ではなく、埼京線などへの乗換え口になっている東口である。当初、初めて本格的なセルフ店が進出……と話題になって大勢の客は押しかけたが、今は一段落して、それでもまだまだお客さんはいっぱいくる。讃岐うどん人気の根強さを見るようだ。
さて、いただいたのはちくわ天うどん。うどん小が190円+ちくわ天が120円で締めて410円。湯でおきのうどんであまりコシは感じられなかったが、立ち食い蕎麦の値段で、このうどんならば、文句はつけられまい。釜玉も宣伝していた。人気なのだろう。こうなってくると、町場の蕎麦屋さんはますます苦しくなる。さて、どうしますか?
●2003年2月24日
名古屋「浅田屋」の味噌煮込みうどん
西区那古野1−18−5 052-551-1288 営業時間11:30-20:45(LO)、日曜日休み
●写真はありません
名古屋で25日に約束があったのだが、打ち合わせをかねて食事を……と誘われて前日名古屋入りした。そこで、食事を……と案内されたのが国際センターの先を円頓寺商店街のほうに入った中間あたりにある、浅田屋さんなる蕎麦屋さん。ここは夜になると蕎麦屋さんというよりも、酒の肴も「どて焼き」「ホルモン」……など、いろいろあって、飲み屋さんに変身というお店である。それでも住宅街にあるため、くるのは常連客だけという、彼らにとっては勝手知ったるお店のようだ。勝手を知らないのは私だけ。で、メニュを見ると、味噌煮込みうどんがある。これは悪くない……と早速、〆に味噌煮込みうどんをたべたい……と表明すると、いや、うどんがもうないんですわ……と予期せぬ反撃を食らう。しかたなしに、ま、〆は蕎麦でもいいか……とあきらめて飲んでいると、「味噌煮込みうどん用意しました」とうれしい声がかかる。どういうことかよくわからないが、食べたい……と表明したものだからあれから用意してくれたらしい。
で、飲んだあとにいただいた味噌煮込みうどんは……麺は少しやわらかかったものの、だしは鰹節が利いて、悪くない。ここでこんな味噌煮込みが食べられるなんて、予想外の出来事で、しかも適度に飲んだあと、こりゃたまらんねえ。名古屋の味噌煮込みは、前回gensanに案内していただいて2軒はしごをしたが、まことやさんには及ばないものの、生駒屋さんにはいい勝負をするのではないか。甘みがあまりないだけに私はこちらを取る。まことやさんのあの鰹節の利いた濃い出汁は絶品だったが、これには少し負けるかもしれない。結局一緒に出かけた3人とも味噌煮込みうどんを〆に注文し、出汁まできれいに飲み干しました。このお店は、きしめん、もり、かけうどん、ころ……とすべて出汁が違うという。一度全部試してみたいところだ。
私はあまり名古屋の味噌煮込みうどんのお店を知らないので、いったいレベルがどのくらいなのかがわからないが悪くないと思う。連れて行かれた常連客によれば、このお店は昼食時はかなり混雑し、「カツ丼」がおすすめとのこと。今度試そう。
●2003年2月23日
「海老民本店」(下目黒・目黒不動尊参道)
東京都目黒区下目黒3-11-10 03-3711-6621
営業時間11:00−15:30、17:00−20:30 水曜日休み
●店構え(上段)とせいろ、せいろ、粗碾き蕎麦
知人からメールをいただいて、「目黒の海老民は行っていないんですか?」と催促された。ま、催促されたわけではなく、たんに聞かれただけに過ぎないのですが、五反田の事務所から近くで行っていないお店というのは気になるもので、いつも頭の隅ににあった。……というわけで、思い切って出かけた。ちかくとはいえ、歩けば20-25分はかかる。電車で行っても乗り換えがあり、同じくらい時間がかかる。こういうお店が一番後回しになる……という気持、お分かりいただけますよね。東急目蒲線(ではない、地下鉄南北線と乗り入れになって路線名が変わったはずだ。よくわからんのよね、最近は)の「不動前」でおりて、目黒のお不動さんへ。行きお店の場所を確認しておいて、お不動さんにおまいりして、帰りに寄る。
お店は、お不動さんの参道にあるお店らしく、落ち着いたたたずまいだ。時間は昼前、11:30ころだろうか。テーブル席では20人ほどのグループが食事をしている。なかよくつけとろ蕎麦を召し上がっている。座敷は30人くらい入れるだろうか。宴会らしく、既に用意が整っている。入る前に、表の立て看板で、本日は、粗碾き手打ちそば……と書かれていたので、基本的には機械打ちのようだ。とりあえず、酒は飲まずに、せいろと粗碾きをオーダーした。せいろは機械打ちだろうと予想されたが、まあ、この地域ではよく知られた美味しいと評判のお店なので、どんなせいろ蕎麦なのかと思って注文したもの。蕎麦粉は北海道江丹別とのこと。
最初に出てきたのは、せいろ蕎麦であった。蕎麦粉の割合は、5:5あたりだろうか。もう少し低いかもしれない。蕎麦の香りがあまりない。ひと口、ふた口すすったら、続いて直ぐに粗碾き蕎麦が出されてしまった。この時間蕎麦をオーダーしたのは私だけなので、せいろ1人前をゆで、続いてすぐに粗碾きをゆでたのだろう。この時間差は1分ほど。仕方がないので、せいろをほっぽって置いて粗碾き蕎麦を食べる。こちらは香りは少し感じられる。並粉に粗碾き粉を20〜30%混ぜた……という粗碾き蕎麦のようだ。画質の低いデジカメしか持っていなかったのでこの写真しかないが、それでも粗碾き粉の黒点がぱらぱらと見える。私の好みから言って、ちょっと残念なのは、辛汁が薄かったこと。蕎麦に香りがあるならば、そういうことはしなくても済むが、せいろも粗碾き蕎麦も、汁にどぼんとつけないと食べられないような状態であった。せめて、粗碾き蕎麦はもう少し濃い目の辛汁がほしかったと思う。
粗碾き蕎麦を食べ終わってから、改めてせいろをいただいたが、ちょっと食べるのに苦労した。どちらを先に出されてもよかったのだが、一緒に持ってこられるのは、ちょっと困りますね。持ってきた人も、蕎麦は出したら早めに食べてほしいとは思うと思うのですがね。粗碾き蕎麦を出されたときには、テーブル上のせいろはまだ、手をつけたばかりで、8割方残っていた。その横に粗碾き蕎麦を並べて置いてゆく時の気持は、どういうものなのか知らん? この地域には支店も2、3軒ある評判の繁盛店なのだが、このサービスはいただけなかった。
●2003年2月15日
大船周辺の蕎麦屋+グルメ店
「あき津」「鎌倉」「山家」「浅野屋」
大船のそば屋というと「あき津」になりますが、不味かったという批評も見ました。私は、「そばがき」と「笹うどん」は推薦できと思っています。そしてお酒を飲み、そばを食べるには程よいと言える雰囲気が好きです。問題は、値段の割に量が少ないことです。趣味そばの唯一の欠点といえます。この「あき津」から歩いて約7〜8分くらいの「鎌倉レイウエル」の前に、手打ちそば「鎌倉」があります。ここの「もりそば」は1,300円(一番安い品)で、十ニ分な量があります。蕎麦の香りも良く、お茶と果物のサービスも行届いています。チョッと奥さんに話しかけると、話が止まらないので要注意。「玉とじそば」は1,800円と値段も良いが、女性には多すぎる量でしょう。
場所は飛びますが、モノレール「片瀬山駅」のすぐそばに「山家」があります。車を停めるのに難渋しますが、ここのそばは推薦できます。大船のそば屋というと「あき津」から歩いて2分くらいのところに「浅野屋」があります。普通のそば屋です。そばを昼食・夕食として食べるに程よいお店です。半生の「氷下魚」、たこ刺、いかの沖漬などお酒の肴が美味しい。手打ちそば「鎌倉」のある同じ通りですが、「山水」という店があります。ここは「うなぎ」がこの辺りでは有名です。が、私は「うなぎ」より「天ぷら」が美味しいと思っています。「山水」と50メートルほど離れたところに「ソネット」という洋食屋があります。昼食で800〜1,000円程度の洋食を食べさせてくれます。なかなかの味です。10回通うと1回タダになる。ビーフシチューがおすすめ。
扨、そばの量ですが、「もりそば」の場合、2枚食べてお腹が7分から8分目というのが、良いところではないでしょうか。浅草「並木藪」あたりだと、2枚食べてもまだ空腹感があるのは、問題。私も蕎麦を打ちますが、体力がいるので、今は打っておりません。何でもそうでしょうが、そばは特に産地だ道具だとコリ出すとキリが無いので、食うことに専念しています。
駄文まで。開亭主人敬白
●2003年2月13日
「寒晒し(?)」
●寒晒し?というそば粉だが?
蕎麦を打っていると、いろいろなものを持ち込まれる。といっても借金の相談とか、そういうものではない。友人がやってきて、いい蕎麦粉をもらってきて”やった”ぞ!と、500gほどの粉が入った袋を出す。どこの、どんないわく付の?と聞くが、何でも寒晒しだという話だぞ、という。ま、わざわざ持ってきたんだから、これで打て!……との催促なのだが、黙っていても、こちらはその気である。ちょっとなめてみたが、あまり香りがしない。ふーん、では打ってみようということになって、生粉でそのまま打った。加水量は約48%、特に気にせずにそのまま打ちあげて、茹でてみた。
ちょっと期待していたのだが、茹でている段階から、何かおかしいぞ!という感じがあり、約50秒、茹で上げてみると少しぱさぱさのような感じである。食べてみると香りが全くない! こりゃ、3年位前の粉じゃないのかい?と聞くが、友人には分からない。蕎麦の好きな知人から、自分は打たないから……と譲り受けてきたらしい。ま、知人は、もらったものの困って、2、3年放っておいたのではないか……というのが結論だが、さすがの寒晒しも、こうなってはおしまいである。……と私は主張したが、友人は、「お前の腕が悪い!」との給う。そういわれては引き下がるわけにはいかない。いつか、ちゃんとした寒晒しを食べさせて、ギャフンと言わせる!と息まいたところ、ちょうどいいタイミングで、古川製粉所さんから、”長野・黒姫の寒晒し蕎麦粉”が発売された。さっそく申し込んだことは言うまでもない。さあーて、楽しみだ。アイツは本当に、「ギャフン」と声を出してくれるだろうか?
●2003年2月10日
「蕎麦茶」
●伊藤園の「蕎麦茶」
打ち合わせに行ったら、中の一人が変わったボトルを持っている。なにそれ?と見せてもらったら、うわさの「伊藤園・蕎麦茶」である。ほう、珍しい……ということで、写真をとらせてもらった。そこのスーパーで買ってきた……というので、買いに行こうかと思ったが、ま、次回でいいかと諦めた。私は、別のミネラルウォーターを持っていたから。持ち主は既に一口飲んでいたが、親切にも、「ちょっと飲んでみる?」と聞いいてくれた。しかし、私は、「いや、いい!」と断わった。持ち主が若い女性なら「飲む、飲む!」というところだが、残念ながら、若い女性はそういうことは私には言ってはくれないのだ! 「ぐやじい!」(東海林さだお風に)
●2003年2月11日
石臼挽き、手打ち蕎麦「蕎山人」……残念ながら閉店されました
横浜市港北区大曽根3-2-2
TEL 045-547-0202 定休日:水曜日
営業時間 昼:11:00−14:00、17:00−19:30
●(上段)ご主人・井芹隆明さん、とメニュ、(中段)焼き味噌、京都の辛み大根、辛み蕎麦
「東横線「大倉山」駅から歩いて15分ほど、いささか遠くて不便ですが、年季が入った実直そうなオヤジさんがたった一人でやっている小さな店です。」という詳しい場所のデータが入ったメールを菊名にお住まいの井村さんとおっしゃる方から2月10日にいただいた。大倉山といえば、私の通勤ルートであり、しかも自宅からもほんの2、3駅というところである。が、なかなか自宅でゆっくりすると言う時間がないために、自宅周辺のソバ屋さんにほとんどいっていないという状態である。「なかなかいけないのが実情ですが、機会があれば……と」お返事を差し上げたが、翌日、珍しく休むことが出来るという状況になった。そうなると、昼近くになって尻が落ち着かない。息子が乗っているバイクを貸り出して、家人には「蕎麦を食べにいってくる!」と言い残して出かけた。家人はニヤっと笑ってアキレたお顔で見送る。場所は地図で調べてある。大倉山を北側に下りた当りである。綱島街道の大曽根信号を新羽の方に入り、しばらく行った右側……。道も狭くなり、まさに住宅街……というあたりに、このお店はあった。2年前に開店されたとのことで、お店も新しい。
ちょうど12時頃か。私が入る前に一人のお客さんが出られたが、私が入ったときにはどなたもいらっしゃらなかった。お店に入ると、左にカウンター席が5、6席。その裏がオープンキッチンの厨房で、カウンターに座ると厨房でなにが行なわれているか、丸見えである。カウンター、厨房が土間にあり、正面の奥に10人と少しが入れるような座敷がある。座敷との間のつなぎの部分に打ち場がある。手前に石臼がおかれている。捏ね鉢はプロ仕様、一茶庵で使っている塗りの大きな捏ね鉢で、台座の上に鎮座ましましている。
ご主人の井芹隆明さんは、もともと長崎県出身で、京都にでて料理屋で働いた後、東京に出て新橋の蕎麦屋さんで修行。当時は出前も行い、自転車で盛りざるを何十枚と肩に担いで出前を行なったという。「新橋駅前のガードの交差点は、交通が混雑する交差点で、昼時に蕎麦の盛りざるを肩にのせて自転車をこいでゆくと、交通整理のおまわりさんが、自動車を止めてソバ屋の出前を通してくれましたよ!」と昔話が興味深い。蕎麦職人として仕事をしてきたが、新しく開店するお店に頼まれて渡り職人のように手伝いに行くが、お店の経営者が仕事を覚えるとすぐにお払い箱になる……そんなことが続いて、結局蕎麦職人としてやってゆくのが難しくなり、塗装技術を覚えて桜木町駅前にあった三菱重工などで塗装工として働くことになる。その後、20年程前に手打ち技術を身に付けたいと、足利の一茶庵に弟子入りし、1年ほど修行。ここで覚えた手打ち技術を生かして、2年前に大倉山でこのお店を開店したという。
お店に入ってメニュを拝見したときに、焼き味噌があるのでもしやと思ったが、やはり短期間だが蕎麦打ち技術は一茶庵仕込みという。駅から15分、全くの住宅街、駐車場はない……ということで、お客さんは近くにお住まいの方が中心にならざるを得ないが、私が酒を飲んでいる間に、熟年のご夫婦がこられて、蕎麦を食べていかれた。味を知っているこうした層には、きちんとここの蕎麦の美味しさが分かるのだろう。帰る頃には、大倉山の梅林で梅見をしてきたという6人のグループが、仕上げにはここの蕎麦を……と来られた。違いが分かる人たちには、やはりちゃんと分かるようだ。
この日、私がいただいたのは、焼き味噌でビールと大七・きもとを1杯、その後で、辛み蕎麦とかけそばである。辛み大根は、「今日は京都の辛み大根があるんです」と見せていただいた(上写真)ので、その大根を使った辛み蕎麦をいただいた。深皿にぶっかけではなく、蕎麦猪口に大根を入れて食べるやり方で、大根を入れる分量が難しい。辛味の強い大根で、これは逸品だ。そば粉は久津間製粉さんの鹿追産などを使っているとのことで、蕎麦は、適度なコシもあリ、ほのかに蕎麦の香りが漂う。蕎麦も強く主張せず、辛み大根との相性がなかなかいい。かけそばも、鰹節の出汁の香りも生きて、蕎麦の香りとのバランスもいい。かけそばの汁としては多すぎるほどたっぷりあり、全部のみ干したくなるような汁であった。
これまでどこにも紹介されていないお店ではないかと思う。蕎麦はなかなかいい。せいろ700円に、辛み蕎麦が800円という根付けでも分かるが、非常に実直なお店の経営をされている。お客さんが少ないのは残念だが、蕎麦の質からいえば、もっとお客さんが入ってもいい。お近くの方、是非お出かけください。損はしません。
●2003年2月7日
宮城野
東京都中央区銀座4-13-13
03-3543-9637
営業時間 11:00-16:00、17:30-22:00
●宮城野の”弁慶”
およそ20年程前、仕事で東銀座に出かけることがよくあった。といってもせいぜい、月に3、4回であるが、出かけるたびによく寄っていたのが、この銀座・歌舞伎座横にある「宮城野」さんである。私の事務所とクライアントの関係で日比谷線を使うことが多かったので、東銀座で下車すると目の前に歌舞伎座がある……という状況も多かった。当時は、いまほど手打ち蕎麦屋さんの数もなく、情報もない。そんななかで、楽しみに通っていたのが、さらしなの里、宮城野……さんあたりである。これに銀座の「吉田」さんくらいしか知らなかった。
当時は、私は蕎麦=せいろ命だったので、ほとんどのお店ではせいろを食べたのだが、どういうわけかこのお店だけは例外で、温かい蕎麦に海老天1個と餅が入った、「弁慶」なるメニュを食べていた。ここでせいろを食べた経験もあるが、ほとんどの場合この「弁慶」である。私はどちらかといえば、「そば」そのものが好きで、種物は基本的に食べないタイプだったから、どこへ行ってもせいろであったが、このお店に来るとせいろを食べなかった。ここのお店の温かい蕎麦(そばの香りが強く楽しめる)と蕎麦汁に天ぷらと餅が入った相性が、なんとも言えずに私には好もしかったのだろう。
ここ10年ほど、あちこちに手打ち蕎麦屋さんが生まれ出して、美味しい蕎麦が食べられるようになった。同時に、東銀座のクライアントさんとの仕事もなくなり、自然と足が遠のいたのは私にとっては自然の成り行きだった。このお店のいいところは、歌舞伎座の隣ということで、終幕後にも食べられるように、夜10時まで開いていることである。歌舞伎を見た人が、終幕後に小腹を満たすため、軽く一杯……という楽しみを提供するお店として、歌舞伎ファンの間ではなくてはならないお店になっているのである。
蕎麦だけでなく、天ぷらをちょっとつまんで……というお客さんもいる。歌舞伎ファンの上客をしっかりとつかんでいるが、贅沢グルメを楽しむ人たちをひきつけるだけの味も提供しているお店でもある。夜遅くになると、着物姿のご婦人客が多いのもこのお店の特徴だ。
夜10時というと、ほとんどの蕎麦屋さんは閉まっていて、ラーメンしか選択肢がなくなる。そんななかで、宮城野さんは貴重な存在である。席数はせいぜい30くらいと決して広いとはいえないお店なのだが、清潔感あり、接客も落ち着いている。自分たちの位置をきちんと見極めて、そこに照準を合わせて商売をされている……そんなお店である。
このお店に、昨年久しぶりで出かけたが、味は変わらなかった。それを思い出して、7日に再度、近くに行く用事があったので出かけてみた。いただいたのは”弁慶”である。相変わらずの味で、温かい蕎麦だけに蕎麦の香りもある、久しぶりで私はあの昔なつかしい味を堪能した。帰り際に見ると、値段は850円である。確か、20年前もそのくらいの値段だったのではないかと思う。20年間、確実に代は代わったようだが、味も値段も変わらない。これはすごいことだと、改めて感心した。これも「あきない」の極意だろう。
●2003年2月3日
「とよくに」
武蔵野市中町1-25-10。
電話:0422-52-8676。営業:11:30−15:00、17:00〜21:00。定休:日祝日
●釜玉しょうゆとお店の前景
三鷹駅から3、4分。北口に出て線路沿いに吉祥寺方向に戻り2ブロックほど行ったところで線路から離れるように左に曲がると、10メートルほど先の右にある。讃岐うどんのお店だが、出汁はイリコではなく、鰹節でしっかりときいている。いただいたのは、釜玉しょうゆうどんとかけうどん。最初に釜玉を注文したのだが、出てきた釜玉を口に入れたとたん、温かいかけうどんも食べてみたくなってすぐに注文した。注文を受けて茹でる……ということを聞いていたので、浜ね煮と思って注文したのだったが、こちらは3分ほどで出てきた。釜玉を御願いしたときに一緒に茹でたのだろう。敵さんにはこちらが追加オーダーすることを読まれていたか? で、釜玉は結構強いコシが感じられたが、かけのほうは少しやわかったような気がする。
釜玉には、削り節がかかっており、卵、しょうゆとの絡み具合がなかなかいい。これで、650円、かけうどんに至っては400円である。立ち食いに等しい値段は、東京では表彰モノである。店主の心意気に拍手を送りたい。
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