殖産興業・富国強兵――<br> 日本の近代化を支えた横浜の洋館・建造物                                              
                     
                 
日本の近代化を支えた――
横浜の洋館・建造物・産業遺構
   
   
   
         
     
 
  037 ストロングビル

   
 
横浜公園の横、大桟橋通りに面して建つストロングビル。かつてのビルがファサードだけでなくそのまま復元されている。


   ■保存のひとつの姿を提案
 横浜公園の東南側、大桟橋に向かう通りに面して建っているのが、昭和13(1938)年に建てられたストロング商会が入っていたストロングビルで、鉄筋コンクリート造地上3階、地下1階のオフィスビルだった。
 そのビルが、平成19(2007)年に解体され、平成21(2009)年にダイワロイネット・ホテルが建てられ、低層階に、旧ストロングビルのファサードが復元された。
 以前のビルは1-3階部分にテナントが入居していたが、いまでも、1-3階はさまざまなテナントが入居し、4階以上がホテルになっている。
 ビルの内装もそのままのようで、1階はいると、奥がホテルのロビー。ホテルへはエレベーターで4階へ。そこが受けつけ。

   
 
内装も、大理石の階段などそのまま復元されている。エレベーターは高層ホテルの方にしか設置されていないので、3階までは歩くしかない。1階は特に天井が高い。


 一見したところ、2階部分に掲げられていた大きな太い「ストロングビル」の文字がなくなっただけで、かつての状態と比べても、それほどの違和感はない。1階にテナントとしてコンビニが入居したり、レストランが入ったりして、その看板なども掲げられている。
 こうした変化については、いろいろと意見も言われているが、経済合理性が基本にあるこの社会で、歴史的な建造物を残すという意味を考えると、行政が買い取って現状保存をしても維持にコストがかかり、それを税金で支出することへの賛意もなかなか得にくい。ましてや、私人に私有財産の権利を行使することを差し止めてもらうというのは無理があろう。

 保護は、昔のままの姿で保存することを主張する人たちもいるが、同時に、昔のものを現代にあわせて活かすべきと主張する人たちもいる。いろいろな考え方があり、いろいろな方法があるはずで、それらの一方を全否定するという発想には違和感がある。
 解体して跡地の有効利用か、はたまた資産を凍結して現状保存で維持費負担かという二者択一の選択になれば、私的な資産の場合は、好意でしか維持できない現状は難しい。
 このシリーズでもたくさんご紹介してきたが、解体後に新しい建物を作り、かつての部分を復元しファサードを生かすというのも、保存と活用の境界で、2者択一ではないぎりぎりの取りうる策として仕方がないというのが実情ではないか。
 
 
2,3階の間の水平を強調したライン。窓とともにシンプルなアール・デコ風の装飾が見える。



 ■保存・復元と活用をうまく融合
 できれば復元ではなく、そのまま流用というのが望ましいが、そうなると内装は大きく変えられることになる。このビルは、内装も復元されていて、その意味では、活用と復元・保存という2つのバランスをうまくなじませた例としてあげられよう。経済合理性を考えれば、このあたりが限界であろうか。
 この建物は、平成19年(2007年)に横浜市から歴史的な建造物として認定されている。これは解体-復元を条件に認められたもので、この時点でダイワロイネット・ホテル(親企業の大和ハウス工業)が、解体復元し、歴史的な建造物を維持することをビル所有者が約束したことになる。v  ところでストロング商会という会社、慶応5(1871)年に日本にやってきて営業を開始したG・ストラウス商会の流れをくむ会社で、設計は横浜出身で、このシリーズでもご紹介した、馬車道の旧川崎銀行横浜支店 (損保ジャパン日本興亜横浜馬車道ビル)や、旧川崎第百銀行横浜支店(前東京三菱銀行横浜支店)などを設計した矢部又吉。

 この建物、昭和13(1938)年に建てられたもので、大理石貼りの半円アーチの玄関上部に筆記体の英文字で「Strong & Co.( Far-East) Ltd.」と以前と変わらず表示されているが、ここまで復元してくれたのはうれしい。
 

 入口玄関。今は閉められていて。ヨコの入り口から入るようになっている。


 見たところ、特段の装飾もなく、非常にすっきりした、清楚な感じのビルで、特徴といえば玄関周りと、2、3階の間の水平に入れられたアール・デコ風のラインくらい。
 クラシックなたたずまいに、何やら意味のありそうな入口の左右に置かれた球形の石。くせのない、イヤみのないデザインといったらいいのか、非常に好もしい感じが残るビルである。
 
 
中から見た入口玄関。ヨコの入り口から出入りする。


 JRの関内駅から中華街に行く場合、横浜公園の中を抜けて、大さん橋通りの信号を超えて右に行き、すぐ角を加賀警察の方に入っていくが、角を方に曲がる前に、そのまま大さん橋通りを橋と反対側、JRの線路の方に進むと、すぐ左にこのビルが見える。ぜひ、ほんの1,2分、ちょっと横道によって眺めてくださいな。余計な思いを忘れてすっきりした気分で、中華街で食事を楽しむことができること請け合います。

       
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