殖産興業・富国強兵――<br> 日本の近代化を支えた横浜の洋館・建造物                                              
                     
                   
日本の近代化を支えた――
横浜の洋館・建造物・産業遺構
   
   
   
         
     
 
  035横浜情報文化センター(旧横浜商工会議所)

   
 
交差点の向かい、神奈川県庁舎の前から見た全体像。どっしりと構えた中に気品がある。
角の丸みが優しさを出している。


 横浜の中心部は、タテヨコを抜く2つの道路が核になって構成されている。それが、北西から南東に走る本町通りと、交差して南西(横浜公園)から北東(県庁舎)に向かって走る日本大通りである。
 そして、この2本の通りの交差点に立つのが、横浜情報文化センター。かつての横浜商工奨励館である。管理者は、公益財団法人横浜企業経営支援財団。
 昭和4年(1929年)に作られた、鉄筋コンクリート造り地上4階、地下1階のコの字型のビルだ。設計は横浜市建築課。コの字の両肩にアールがついているために、見た目が軟かくなっている。このビルがコの字型をしていることは、外から見ると全くわからない。
 見るからにどっしりしたビルだが、それもそのはず、関東大震災後の復興事業として建てられたビルで、それだけに頑強にしっかり作られているのではないか。
 企画・計画時の名称は横浜商昴陳列所だったが、完成後、横浜商工奨励館としてオープンした。平成11年(1999年)横浜市歴史的建造物に認定されている。
 完成したときは、1・2階に商品陳列所、3階に各種事務室と中央に貴賓室があり、4階は横浜商工会議所入居しており、屋上には横浜港の展望やイベントなどを楽しんだりできる施設まで整えられていた。
 
 
階段室。大理石でしっかり作られている。大震災の復興の意味で、通常以上に頑強に作られている
ということもあるのではないか。


 外観も丸みを帯びたフィルムが優雅だ。外壁は、グレーの大きめの四角い石で、人造石のようだ。隣の三井物産ビルの白いタイルと、交差点をはさんで向き合う県庁舎のスクラッチタイルとの調和を図って決められたそうだ。横浜市建築課やるではないか。

   ■情報化時代の申し子
 平成12(2000)年に、旧建物を若干改造し、コの字の空いているところに高層棟を増築し、横浜情報文化センターとして改めて開館した。
 現在は、2-3階に日本新聞博物館が、8-9階に放送ライブラリーが入っている以外は、一般のテナントが入居している。この2つが入っていることから情報文化センターと名付けられているのだろう。なぜ新聞博物館が横浜にあるのかといえば、実は日本での日刊新聞の発祥の地は、横浜になっているからだ。
 
 
中華街にある日刊新聞発祥の地碑。1864年ジョセフ彦がこの場所(居留地141番地)で『海外新聞』を
発行した。もう一つ新聞発祥地の碑があるが、これは今、横浜市役所の新設工事中でみられない。


 新聞博物館は、日本新聞協会が運営する新聞に関する展示館で、新聞を読めるほか、過去の企画などを閲覧できる。1階には、静岡新聞社が昭和の時代に使っていた高速のオフセット輪転機が展示されている。
 また、放送ライブラリーは、放送法に基づいて設置されている、わが国唯一の放送番組専門のアーカイブ施設で、NHK、民放局のテレビ・ラジオ番組、コマーシャルがここで公開されている。申し込めば誰でも無料で過去の番組などを閲覧できる。詳細は、以下にご確認ください(https://www.bpcj.or.jp/info/)。

 
 
日本大通りに面した正面玄関。整然と並んだ窓に、ベランダ風のデザインが、
映画に登場するシーンのようなイメージを生み出している。


 日本大通りをはさんで、横浜地方裁判所から見ると、正面は左右対称で、中央に玄関入り口がある。1階は石張りといっても人工石のようだ。玄関周辺にアール・デコ風のデザインがあり、2-3階の窓は規則正しい縦長窓、4階はアーチ窓、それぞれにベランダがついていて、その上にコーニスが載る。映画のシーンに使われるような光景だ。
 内部も、大理石が使われた階段や3階に貴賓室などがあり、かつてのまま修復保存されている。
 横浜商工奨励館はかつて米国領事館が置かれた地であり単にモニュメンタルなだけでなく、建物としても横浜の震災復興期のものを代表するものである。

 

 1階内部の重壮な意匠。アーチ梁、漆喰の飾り


       
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