殖産興業・富国強兵――<br> 日本の近代化を支えた横浜の洋館・建造物                                              
                     
                   
日本の近代化を支えた――
横浜の洋館・建造物・産業遺構
   
   
   
         
     
 
  016 三井住友銀行横浜支店(旧三井銀行横浜支店)

   
 
正面から見ると、4本の太い付け柱の大オーダーが、存在感をもってぐんと迫ってくる。古典様式には珍しく大きな窓も特徴だ。左側側面にも2本の大オーダーがある。完成以来90年弱、銀行業務を継続している貴重な銀行である。



   ■88年間銀行として現役稼働
 生糸貿易を支えた企業の強力な支援者となったのは銀行だった。前に紹介した旧富士銀行横浜支店(元東京芸大)もそうだが、銀行のファサードに古代建築を模した2,3階を通した付け柱のオーダーなどの意匠が多いのは、そもそも日本の銀行が横浜から始まり、そのデザインが銀行のイメージとして定着したため、全国に広まったためである。
 本町通りでみれば旧三菱銀行行の2ブロック先、横浜開港記念館の西側、桜木町寄りにあるのが、三井銀行横浜支店として昭和6(1931)年に建てられた三井住友銀行横浜支店。
 昭和初めの完成以来、88年間にわたって銀行業務を継続している希少価値のある銀行である。

   本町通りを歩いていると、正面に向ってずんと太い大オーダーが立ち上がっているのが目につく。天井が高いので、有に一般のオフィスビルの3階分ほどの高さがある。それだけ存在感がある。
 設計は、古典主義の大御所として知られるトロ―ブリッジ&リビングストンという米国の建築設計事務所で、この事務所はほかにも東京の三井本館、大坂の船場支店などいくつか三井銀行の店舗の設計を担当している。

   
 
入り口も多少手が入れられてはいるが基本的に昔のまま。入った中もこの雰囲気なので、近くにあればぜひここを使いたいところだ。


 ■内部もそのまま活用
 洋式は、クラシック・ネオルネサンス式で、道路に面した正面に付け柱として4本、側面に2本の円柱を置き、その柱に溝を彫り、柱頭にイオニア式の巻貝の飾りをつけている。
 外壁も付け柱も花崗岩で、鉄骨鉄筋コンクリート2階建てなのだが、一見すると石造りの古典主義建築様式のように見える。
 内部にも、ロビーに八角形のコリント式オーダーが立ち上がり、床、壁、客間、営業室、階段部屋・・・などが大理石張り、という本格的な作り。いまでも銀行として使われ続けているのだが、ほとんど改造されずに来ている。2階分は優にある高い天井にたくさんのライトが光り、安定感と重厚感はゆるぎない。
 ファサードだけでなく、内部も当時のままを活かして業務を継続している銀行として、貴重な存在である。このITの時代に、それをどのように可能にしているのか、目に見えない部分にも非常に興味のあるところだ。

   
 
柱の基部の様子。きりっとした表情がお分かりと思う。よく手入れされていることが分かる。働いている方々の丹精だろう。



   保存か/活用かという二者択一ではなく、そのまま現役の建造物として使い続けられるというのは理想だが、情報化時代になると、接続するPCも増え、室内の電気配線の増設が不可欠になり、その効率的な運用なども必要になってくる。
 そうなると改装が避けられなくなってくるのだが、たぶんもともとの構造・設計状態によって、次の時代への改装の適否があるだろう。
 長い間使い続けられる良いデザイン、普遍的なデザイン、という観点で見ると、単にファサードや外観だけでなく、むしろ、業務の変化に対応できる内装デザインの基本構造が問われるのではないか。
 それは予測というようなアーティフィックな、技術的なことではなく、芸術の美しさを生み出すような、アーティスティックな感覚が求められるのかもしれない。そういえば artificial intelligence は、人工知能って言ったっけ?
 
 
上部に軒が張り出していて、その軒にぐるりと装飾が施されている。



 

   
       
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