殖産興業・富国強兵――<br> 日本の近代化を支えた横浜の洋館・建造物                                              
                     
                   
日本の近代化を支えた――
横浜の洋館・建造物・産業遺構
   
   
   
         
     
 
  012 日本郵船歴史博物館

   
 
50メートルにわたって16本の円柱がならぶファサードの重量感と迫力に圧倒される。



   ■大迫力−−16本の列柱
 JR関内駅から関内大通りを海の方向を目指して歩き、本町通りに出るあたりから、正面に、重量感のあるコリント式の大オーダー(列柱)が見える。
 馬車道をぶらぶら歩いてくるならば、神奈川歴史博物館を左手に、馬車道大津ビル、旧富士銀行横浜支店を右に見て、本町1丁目の交差点を渡り、そのまままっすぐ旧生糸検査所(横浜第2合同庁舎)の前を直進。二つ目の海岸通りを右に曲がれば、左に日本郵船の歴史博物館がある。桜木町駅からでも歩いて5分ほど。みなとみらい線の馬車道駅で下車するなら、歩いて1,2分だ。
 海岸通りという一本裏通りにあるために、見過ごされがちな建物なのだが、この前を通れば、そのまま自然の流れで、横浜税関のクイーンの塔や、旧産業組合館、昭和ビルなどにアプローチできる、なかなか便利は所になるのだ。

   
 
柱頭のアカンサスの飾りとその上の渦巻きの装飾が重壮な中にも、繊細さを感じさせる。


 古典様式のオーダー(列柱)を使っている建築物は多いが、長さ50メートルほどにわかって、16本もの円柱が構えているのは、珍しい。見た瞬間、「ほうっ」、と思わず口に出てしまうほど圧巻だ。
 前にある海岸通りがギリギリ片側2車線という幅なので、正面から撮影したいところだが、少しくらいの広さの口径レンズでは1枚の写真にはなかなか納められない。というカメラマン泣かせの建物でもある。というのは斜めからの写真しかないいいわけだが、そのくらいの迫力を持った規模だ。正面から撮った写真はあまり見たことがない。
 この海岸通りをそのまままっすぐ進めば、横浜税関、神奈川県庁舎を経由して、象の鼻、赤レンガ倉庫、横浜開港資料館、大さん橋・・・を経て、山下公園通りに直結していて、山下公園やホテル ニューグランドへとつながる生糸の歴史の道である。

 
 
大理石で重量感のある手すりなど、内部も建設当時の構造をよく残している。


 ■戦前の古典主義洋式建築の大作
 建てられたのは、海運が時代の寵児として華やかだった昭和11(1936)年で、鉄筋コンクリート造り3階建て。当時の状況から言えば、日本だけでなく、世界を代表する郵船会社の本社にふさわしい構えとして作られた。
 設計は和田順顕。石川県出身で、東京美大を卒業したあと横浜鶴屋(後に松屋→松坂屋に合併)の設計に携わったのをかわきりに、慶應義塾大学医学部特別薬化学教室(信濃町メディアセンター)や神奈川県庁舎の屋上など多くの横浜の建築設計に関わった人で、特徴としては、神奈川県内外で、多くの実業家の邸宅を設計していることだ。
 日本にプレハブを導入する際に、日本向けに設計を変更したことでも知られる。
 さてこの建物、長い間、日本郵船の横浜支店として使われてきたが、2003年6月に一部を改装し、日本郵船歴史博物館としてリニューアルオープンした。現在も事務所として併用されている。

   正面オーダーの円柱の柱頭はアカンサスの葉があしらわれ、重厚で直線的なデザインの中に柔らかなイメージを持たせている。正面に入り口が中央(3つ扉)と左右に1つ扉の計3つ。下の円柱のオーダーが3階の細い角形の柱に繋がっており、何とも、どっしりと構えた重壮な意匠で、16本の柱が支えているように見える上層部とのバランスも素晴らしい。
 
 
サイドも装飾はないが、角の柱が通されていて、正面の意匠が踏襲されているのがうれしい。


  リニューアル改装されたとはいえ、入り口ドア、大理石がまぶしい石造りの階段部屋、床のタイルなど、当初の構造、デザインはそのまま生かされており、海運が華やかだった時代をほうふつとさせる。戦前の古典主義洋式建築の大作で、一度は見ておきたい。
 なお、開設されている日本郵船歴史博物館は、三菱彌太郎「九十九商会」の流れを汲んでいる日本郵船の歴史博物館として、日本の海運の歴史を展示したものであり、いわば日本の海外取引を支えてきた会社として日本の近代化の一方の歴史を知るには格好の施設である。
 山下公園に係留されている氷川丸は、この日本郵船の保有船であり、その歴史についても学ぶことができる。歴史博物館は月曜日休み、入館料大人400円(氷川丸との共通券500円はお得だ)。
  

       
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